アジレント・テクノロジー(旧ヒューレットパッカード、HP)の標準信号発生器(SG)、HP8647Aが動かなくなった。電源を入れると、「エラー627 Battery RAM failure」 が出て全くキー入力を受け付けない。しかし、ごくたまに、電源ON後、数分間はキー入力出来ることがある。その数分間が過ぎるとキーを受け付けなくなる。


標準信号発生器の型番「HP8647A」でGoogle検索すると、米国のアジレントのサイトでサービスマニュアルがPDFファイルで公開されている。エラー番号を頼りに、検索するとどうやら『バックアップバッテリーエラー』であるらしい。パソコンでも十年以上使っていると、BIOS設定のバッテリバックアップが効かなくなってエラーになることがあるが、それと同じである。
解決策は見えて来た、と、アジレント社に問い合わせメールを入れた。すぐに翌日、返事が来た。

当該製品は既に修理サービス期間を終了しております。バッテリーの交換だけであれば可能です。その場合、代金は五万円となります。
しかし、他にも故障箇所がある場合、部品の手配が出来ず、直らないかも知れません。その場合は壱万七千円頂戴いたします。

『サービス期間が終了しても対応してくれるなんて、何と偉い、さすがアジレント社だ』、などとは思えるわけがない。『五万円だとぉ!?』、と頭から火が出そうになるのを抑えに抑えて、サービス部署に直接電話し、バッテリー単体で販売出来ないか丁重に聞いてみた。すると、

通常の場合、バッテリーは部品扱いですので販売可能なのですが、サービス修理期間を終了しておりますので、現在も可能かどうか、担当部署と検討してみます。

と言われた。さらに翌日、「販売可能であり、代金も2000円である」との連絡が来た。五万円が二千円である。その上、「バッテリーは奥の方に取り付けられており、アクセスが難しいので、リンク先の図面を参照してください」と、交換方法まで教えてくれたが図面はあまり約に立たなかった。

分解はかなり大変であった。ミニノートPCのハードディスク換装と同程度と言えば難易度が分かると思う。肝は以下の通り。

  1. ねじは全てトルクス
  2. 基板はねじ留めされているだけでなく、いろいろつながっている。

    A) フロントパネルと何本かのケーブルでつながっている。コネクタも種々なので切らないように。

    B) 電源ボードからのコネクタが来ている。

    C) シールドボックスに入ったRF系モジュールを三つ取り外す。フックを引っ張るだけなので簡単に外れるのだが、三つのモジュールの順番をメモ。

    D) RF出力モジュールがサイドパネルにねじ留めされており、これのSMAコネクタ/オスが、基板のメスSMAコネクタに直接はまっている。これを慎重に緩めて外してやる必要がある。

  3. 購入したバッテリーはリチウム電池で半田づけ用のタグが出ている。

    まず、基板上の古い電池の足を一本ずつ半田ゴテで温めて外し、新しい電池を取り付ける。電池交換後、ボード、モジュール、基板を慎重に戻して行く。

  4. 最初、出力モジュールのSMAコネクタ(上の2−Dで述べたこと)を戻し忘れていて、操作は出来るものの出力が一切出ずに焦ったが、コネクタをきっちり締めると、無事に動作し、NMR信号も元の通り見えた。

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